書店の英語学習コーナーへ行くと、「その英語、ネイティブはこう話します」とか「ネイティブはこう話す」といった書籍をよく見かけます。
しかし、私はこういった書籍を初心者にはお勧めしません。
誤解の無いように先に言っておきますが、別にこれらの本をダメだと言っている訳ではありません。
これらの本は、日本在住のネイティブスピーカーが、日本人の英語を聞いて「言いたいことはわかるけど、ネイティブが使うもっとスマートな言い方があるよ」とネイティブスピーカーの立場から素直に伝えた書籍です。
こういった本は、中級者以上の人が英語圏で使われる英語をより深く理解しようとしたときにはかなり有力な情報です。
しかし、これらの書籍で紹介しているネイティブがよく使うフレーズは、”英語圏”でしか通じない英語が多いのです。
英語は世界公用語だが、非ネイティブ話者のほうが圧倒的に多い
英語は世界で最も使用されている言語で、お互いの母国語が英語でない非ネイティブ同士での会話にはほぼ英語が使われていると言って過言ではありません。
英語を母語とする話者数は、アメリカ、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドなど合わせておよそ4億人程度に対して、母語以外の言語として英語を使う話者数は、およそ20億人以上いると言われています。
そう、英語のネイティブスピーカーよりも英語を母語としない人達が話す英語のほうが圧倒的に多いのです。
ネイティブスピーカーの英語が通じない?
”非英語圏”では、空港やホテルと言えども英語圏のように英語が通じるとは限りません。
特に、英語圏で使われる慣用句、いわゆるイディオムの中には非英語圏で通じないものがたくさんあります。
例えば、”It’s up to you.”(それはあなた次第だよ)とか”It’s a piece of cake!”(そんなの簡単だよ!)といったようなイディオムは、非英語圏の英語話者の間でも通じます。
なぜならこれらのイディオムは英語を勉強していく中でも比較的早い段階で出会うイディオムだからです。
しかし、”fill one’s shoes”(~の後を引き継ぐ)とか”pull over”((車を)止める)といったイディオムになると、相手の英語レベルによっては通じない場面が出てきます。
以前、アメリカ人のエンジニアと一緒に中国のとある電子部品工場に出張に行ったときのことです。
工場側のマネージャと打ち合わせしていても、相手はアメリカ人の話すイディオムや米語独特のリエゾンに慣れていなくて、彼の英語が通じないことが多々ありました。
一方、私の話す英語は典型的な母国語訛りのあるアジア人の英語で、さほど込み入ったイディオムも使わなかった(使えなかった)せいか、相手との会話に不自由しませんでした。
かと思えば、別の会社ではアメリカに留学経験のある担当者が出てきて、同行したアメリカ人と話し出すと私が聞き取れなくて右往左往したことがありました。
こういったことは非英語圏ではよくある話です。
英語はツール、人によってレベルはまちまち
非英語圏の人が英語を学ぶ目的は様々です。
翻訳者や通訳者を目指す人だったり、英語圏への移住、留学を目指している人から、ホテルの接客係や観光地のタクシードライバーまでその学習目的は幅広い。
そのため、英語を学ぶ人の目的によって到達する英語レベルはまちまちです。
翻訳者や通訳者の人であれば、ネイティブ使うイディオムなどは全て理解していないと仕事になりませんが、ホテルやタクシーではそこまでの英語レベルは必要ありません。
私たち日本人含め、非英語圏の人間にとって英語はツールです。
自分の仕事や目的に必要なレベルがあればそれで用が足りるのですから、ネイティブが使うスマートな言い回しまで全て覚える必要はありません。
増してや、初心者の段階では「ネイティブが使う~」というような内容を学習するのは早すぎるのです。
これらの書籍や情報は、ある程度英語の基礎が出来てから取り入れても全然遅くありません。
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