今の子供たちが社会に出る頃には今以上にグローバル化が進み、就職活動は国内の大学生だけでなく海外からの応募者と戦わなければならなくなると思います。
だからと言って幼児のうちから英語教育を授けても、残念ながらバイリンガルには育ちません。
親が出来ないことを子供にやらせるのは、単なる親のエゴ
子供に早期に英語教育を受けさせたい親御さんは、大体このような考えを持っているのではないでしょうか。
- 親自身は英語が出来ない、もしくは苦手である
- 学生時代、英語が苦手だった。嫌な思い出がある
- もっと早く英語を初めていれば、もっと自然に英語が身についたはず
そのため、わが子には早い時期から英語教育の環境を与えようとするのですが、親が思うほど子供は英語が出来るようになりません。
幼児に英語教育は必要?(1)でも触れましたが、文法に触れずに英語を覚えるには、膨大なインプット/アウトプットをこなす必要があります。
これは何も英語に限った話ではありません。母国語以外の言語を文法を学ばずに習得しようと思ったら、1日の半分以上を母国語以外を使う時間に充てなければマスターすることはまず不可能です。
一方で「幼児は文法など勉強せずに耳から覚えるじゃないか」という方がいます。
確かにそれは事実です。
しかし、そのためには一日何時間その言語に触れる時間が必要でしょうか?
日本語の場合、幼児はほぼ一日中日本語に触れています。保育園、幼稚園で触れる会話、家に帰って触れる親の会話で、1日10時間以上は日本語のシャワーを浴びています。
1日10時間ということは1か月で300時間、1年で3,600時間です。保育園/幼稚園3年間で10,800時間、日本語のシャワーを浴びてようやく意思疎通できるレベルに到達するわけです。
バイリンガル環境の場合、英語オンリーの保育園や幼稚園に通わせるとすれば、日中5時間英語のシャワー、家に帰って日本語のシャワーを浴びる環境なので、3年間で日本語が5,400時間、英語が5,400時間になります。このくらいであれば、日本語、英語それぞれ意思疎通できるレベルになれるでしょう。
つまり、週に2~3回、1回2時間程度の英会話スクールに行くだけでは、圧倒的に英語に触れる時間が足りないのです。
それでも子供が、陽気な外国人講師やスクールの雰囲気が楽しくて通っているのであればまだいいのですが、子供の興味が薄かったりあまり楽しいと思っていないのに無理に通わせるのは単に子供を英語嫌いにするだけです。
親は子の将来を考えて投資しているのかもしれませんが、子供が納得できる理由が無いのに強制すると、いずれ子供にこう言われます。
「お父さんやお母さんだって(英語が)出来ないくせに」
そもそも親は「自分が出来ないことを子供にやらせるのは、親のエゴ」と知るべきです。
子供が英語に自発的に取り組む環境とは
一番確実なのは親自身が英語を話せるようになることです。
今更、勉強なんかできませんか?
今から新しいことを覚えることは億劫ですか?
子供はそんな親の胸の内を見透かしています。そして「自分は出来ないくせに、なんで私には言うの!」と思うことでしょう。
「お前の将来を思って言ってるんだぞ!」と言ったところで子供には理解できるはずがありません。あなたが子供の頃、真剣に将来のことを考えたりしていましたか?
親が英語が出来ることを背中で見せる
重機メーカで働いている私の知人は、小学3年生の子供が周囲で英会話スクールに行ってるから自分も行きたい、と言い始めたそうですがそれを許可しなかったそうです。
一方で彼は、街中で困っているような外国人旅行者には積極的に英語で声をかけて助けてあげたり、レジで意思疎通が上手くいかず困っている外国人にも声を掛けてあげることをよくやっていたそうです。
彼の子供たちは、父親が旅行先で度々外国人旅行者のシャッターを押してあげたり、困っている旅行者を見ては声をかけてあげる姿を見て、自然と外国語に対する興味を増していったそうです。
もちろんこれは彼自身のホスピタリティから来ているところもありますが、困っている外国人を英語で助けてあげるお父さんを見た子供たちが、それを誇らしく思ったことは想像に難くありません。
彼の子供たちは、中学に入ってからは親が何も言わずとも自ら進んで英語に力を入れて学校でもトップクラスだったそうです。
結局彼がやったことは、高額な英会話教材を買い与えた訳でも英会話スクールに行かせた訳でもなく、英検3級程度の英語力で外国人旅行者に親切にしただけです。
その外国人旅行者は現地の人の親切が旅の記憶として残り、彼の子供たちには他人に親切を施す親の背中を見せられ、しかも子供たちの学習意欲を掻き立てるという、一石二鳥ならぬ一石三鳥です。
当初私は、子供が自ら行きたいと言っているなら英会話スクールに行かせてあげればいいのに、と思っていました。
しかし後で彼に話を聞いたところ、彼自身も子供時代に親が外国人に英語で道案内していたのを見たとき、ずいぶん誇らしく思ったそうで、そのときの体験を同じように子供達に与えてあげたかったのだそうです。
これこそpricelessな体験です。
仕事で使わなくても英語を勉強する価値はある
別に仕事で英語を必要としていない、とか、英語に興味がない、という人でも「わが子には英語を」と思うのであれば、自分自身が英語を勉強する価値は十分あります。
自分が英語を勉強する姿を子供に見せることで、少なくとも子供は「口から出まかせに”英語英語”って言ってる訳じゃないんだな」と感じ取るでしょう。
自分が必死に勉強すれば、たとえ今は拙い英語だとしても、子供には「英語は将来必要になるスキルなんだ」というメッセージが伝わるはずです。
自分は出来ないのに「子供には○○○○になって欲しい」と思うのは親のエゴです。しかし子供自身が自ら「○○○○になりたい」と思うのであれば、それはエゴではありません。
困っている旅行者に手を差し伸べることは英検3級程度(中学卒業程度)の英語力で十分可能です。
「子は親の背中を見て育つ」と言います。高価な幼児教育を与えるよりも、親の背中を見せてあげることが子供のやる気スイッチを入れる一番の近道です。
関連記事:
>>子供への英語教育は不要だと思った理由(1)
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