アメリカのジョージア州ミネアポリスで起きた、無抵抗の黒人男性が白人警官に首を押さえつけられて死亡した事件を発端として、人種差別に対する抗議活動が激しさを増しています。
ジョージ・フロイド氏は偽札を使ってタバコを購入しようとしたところを白人警官に取り押さえられ、首を押さえつけられているうちに窒息して死亡した事件です。
地面に強烈に押さえ込まれている動画をご覧になった方も多いのではないでしょうか。
当初、この白人警官は正当な職務執行であるとされていましたが、取り押さえているときの動画が世に出るやいなや警察への批判が殺到。一点して白人警官の逮捕~第2級殺人の起訴に繋がりました。
この時の抗議デモで掲げられたワードが”Black Lives Matter”です。SNS上でも真っ黒な画像に#BLMというハッシュタグを付けている人が多かったですね。
現代でも黒人に対する差別の深刻さは言うまでもありませんが、ここでは差別の背景やイデオロギーについての説明は割愛します。
“Black Lives Matter”という言葉の意味について、純粋に解説したいと思います。
Black Lives Matterの意味とは?
抗議デモで掲げていた”Black Lives Matter”とはどういう意味でしょうか?
私の周囲の英語学習者からも質問がありました。
「黒人はこの世界に住む権利がある」ですか?
「黒人は問題の中に生きている」ですか?
残念ながらどれも違います。
この文章を理解するポイントは”lives”。
“Black”は黒人を指していることは誰でもわかると思います。
次に”Lives”、これは「住む(live)」という動詞ではありません。一見、liveの三人称と思ってしまいますが違います。
これはlife(命)という名詞の複数形なんです。
そして、ここでの”matter”は名詞ではなく動詞なんですね。動詞の”matter”は「重要な」という意味です。
つまり直訳すると、
黒人の命は 重要だ
になります。
時事問題を扱うサイトでは、これを
「黒人の命を守れ」
「黒人の命は価値がある」
と意訳しており、これが英語学習者には戸惑ってしまうのだと思います。
というのは、「黒人の命は大切」であれば、初学者は”Black life is important”、「黒人の命を守れ」は”Save black life”と考えるので、どう考えても”Black Lives Matter”には繋がらないのです。
文法的にはどうなの?
“Black Lives Matter”は一瞬、
という第三文型に見えますよね。
でも実はそうではなく、
というS+Vの第一文型です。
ところが、
と逆に質問されました。
もし”lives”を「住む」という動詞として捉えるのであれば、
“Black”という主語は、”The black guy”といったような”個”を特定する主語でないと、”lives”という三人称単数の動詞変化と合いません。
つまり”Black”という黒人全般を指す言葉を三人称単数の動詞で受けるのは、英文的に違和感タップリなのです。
この違和感を感じられることができれば、ここでの”lives”は動詞ではなく名詞の可能性であることがわかり、lives = lifeの複数形であることに気がつくことができます。
この違和感を感じ取れない、というのは、英文に触れている量が圧倒的に少ないからです。
発音からもわかる
“lives”には二つの読み方があります。一つは「ライヴス」、もう一つは「リーヴス」。
・発音が「リーヴス」の場合:「住む」(動詞)の三人称単数形
“lives”が「住む」という動詞であれば、発音は「リーヴス」です。
しかし”Black Lives Matter”では「ライブス」と発音していますから、「ライブス」=「ライフ(life)」の複数形であることが発音からもわかります。
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