なぜ日本では企業買収(M&A)を良く思わない人が多いのか?

businessman

マーケットの中で自社のプレゼンスを高めたい場合は、自社が持っていない無い強みを作る必要があります。

しかし技術や経験は一朝一夕に得られないので、手っ取り早いのはその技術や経験を持っている会社を買ってしまうことでしょう。

いわゆる”企業買収”です。英語では”M&A”(Merger and Acquisitions)で、最近は日本でも良く使いますね。

“企業買収”、”M&A”、”経営統合”は言葉は違えど意味は同じです。どの場合でも存続会社が統合する会社の株式を取得します。

つい先日もソフトバンクが英国ARM社を日本円で約3.3兆円で買収したことが話題になりました。

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日本で企業買収のイメージが悪い理由とは

一般的に、自社の事業ポートフォリオで弱い部分を補うには

  • 独自に研究開発を行い、技術・経験を蓄積する
  • 既にその技術やサービスを持っている会社と技術提携もしくは買収する

するしかありません。

今の時代、よほど尖った技術やサービスでない限りは、既に技術を持っている会社を買収してしまうほうが市場でイニシアチブを取りやすいというのがスタンダードな考え方です。

しかし、日本ではなぜか買収ついて肯定的に捉えている人がまだまだ少ないように感じます。

特に雇用される立場の従業員では顕著で「買収されたら奴隷のようにこき使われるんじゃないか?」とか「親会社の連中に虐げられるんじゃないか?」と考えてしまう人が多いです。なぜでしょうか?

”買収”という響きの悪さ

まず一つに”買収”という言葉の響きがネガティブなところでしょう。なんとなく”収賄”という言葉と被りませんか?

人心をお金で買うことも「買収」と言いますから、どうしても”企業買収”とか”買収された”と聞くと、強引に金の力で持っていかれた、というイメージに繋がってしまうのではないでしょうか?

最近ではそういうネガティブなイメージを避けて”経営統合”という言い方もよく見かけます。

ハゲタカファンドのような悪いイメージの定着

随分前ですが、資金繰りに行き詰った企業が外国のファンドに買収されて事業ユニット毎に切り売りされてしまう、いわゆるハゲタカファンドをテーマにしたドラマがヒットしました。

あの手のドラマは、抜きんでた技術を持つ実直な会社が技術畑出身の創業社長の経営によって会社が傾き、どうにも立ち行かなくなったところを外国のファンドが格安で買収してその技術を欲しがる会社に売り飛ばす、というシナリオで、完全にファンド側が悪者になって描かれています。

同じ時期にライブドアや村上ファンドへのバッシングもあって、日本では「ファンド=悪」のイメージが定着してしまいました。

しかし、メディアはあまり報道しませんが、ハゲタカファンドが一方的に悪いとも言えません。

従業員の立場で見れば、一生懸命技術や製品を磨いて業界内のトップランナーでいるにもかかわらず、経営が傾いてしまったがために給料は上がらず、賞与も満足に出ない状況に陥っていたわけです。

このままいけば倒産か、良くて民事再生法か会社更生法を適用することになり、細々と自力再生するかどこかの会社に事業譲渡されるのが関の山です。

そうなる前にファンドが買収して負債を整理しながら売却してしまえば、経営陣は総退陣になりますが、少なくとも個人保証で背負っていた負債は無くなるでしょうし、従業員にしても今よりももっと高く評価してくれる会社で活躍できることになります。

確かに外から見れば、格安の会社を買って切り売りして儲ける、というのは創業者の会社に対する想いを切り売りするように映ってしまうかもしれません。だから心情的に「ファンド、けしからん」になるだと思いますが、かと言って創業者の愛情だけでは従業員を路頭に迷わせてしまうのも事実なのです。

お金で解決することに対する背徳感

なぜか日本には「時間をお金で買う」ということに拒否反応を示す人が多いです。

コツコツと経験や知識を積み上げることを美徳とするメンタリティがまだまだ根強いのだと思います。

なんか時間をお金で買うと「ズル」したような気分になっちゃうんでしょうね。

でも世の中はそう出来ていません。

お金があれば塾にも行けますし、いい参考書も買えます。お金があれば自動車も全自動洗濯機も食洗器も買えます。現代のほぼ全ての日本人はお金で時間を買っているわけです。

なのに会社や事業を買収することに拒否反応を持ってしまうのは、まだまだ企業買収に対するイメージの悪さがこびりついているからなのでしょう。

買収された企業が奴隷のように使われることなんてありません

これも大きな勘違いなのですが、日本ではなんとなく「買収されたら親会社に奴隷のように扱われるのでは?」と思っている人が多いように感じます。

金融系のドラマなどで、銀行が経営統合したときに「◎◎さんは××系出身だから(上に上がれない)」みたいな描写を見てそう思っているかもしれませんが、普通の民間企業のM&Aでそんなことはまずあり得ません。

親会社の社長が、自分の機嫌の掃け口にするためだけに企業買収するわけがありません。その会社の技術やサービスが必要だから買ったのです。そして技術やサービスは”モノ”ではなく人についてきます。

買収した親会社からしてみれば、子会社のパフォーマンスを最大限発揮してもらうにはどうするか?と考えるのが普通です。そうしなければ買収して得られた成果を株主に説明できません。

だから親会社の人間が買収した子会社の人間を見下してこき使う、なんてことはあり得ないのです。もしそんなことする人間が親会社にいたら救いようのない大馬鹿者です。

一方、買収した親会社にとっても安穏としていられません。

一般的に買収した側は会社規模が大きくて人材も子会社より豊富です。会社全体のレベルで言えば子会社より人材レベルが高いでしょう。

しかし子会社の人材の中には光っている人材が必ずいるものです

最初は親会社、子会社のヒエラルキーがどうしても存在しますが、1年2年と経っていくうちにそれが無くなり、3年もすれば自分を追い越す人材が子会社から出てくることも往々にしてあります。

つまり親会社に在籍している身分だからと言って、未来永劫安泰ではないのです

海外でのM&Aの捉え方

私のお付き合いのある海外の会社も頻繁に買収したりされたりしていますが、従業員は割とドライに見ています。

そこそこの会社に買収されると、それを好機に捉えてキャリアップを狙う人もいます。むしろ転職する手間が省けたぐらいに思う人もいるぐらいです。

ただ、結構な地位(vice president)に就いてそこに胡座をかいていたような人は、大体マージされたときに切られてしまいますね。これは日本も海外もあまり変わりません。

今回は”M&A”(Merger and acquisitions)の話でしたが、英語の話はほとんど無かったですね。すみません…。