開発や製品設計に携わっていると、多かれ少なかれ「問題」が発生します。
多くは技術的な問題ですが、その際よく使われるのが”issue”(問題)です。
英語が出来る人には当たり前の単語”issue”ですが、英語に慣れていない人には”problem”との違いがわかり辛いのではないでしょうか。
issueの意味はなぜわかりにくい?
英和辞書でissueを調べると、
2.【他動】「公表する、発行する、刊行する」
3.【名】「問題、論点、争点」
という順番で出てきますが、「問題」としての訳はなぜか後のほうに掲載されています。
私の感覚では、issueは名詞で「問題、論点、争点」という意味と動詞の「発行する、公表する」で使われるケースがほとんどだと思います。
しかし、大体どの辞書を見ても、3~5番目ぐらいに初めて
・(訴訟の当事者間などの)争点,係争点;(公共性のある)論点,問題点;紛争の的まと[核心,焦点]
と出てきます。
この訳をぱっと見ても、issueが製品や部品の問題、課題のことを指している言葉であることがなかなか繋がらなくて理解するまでに時間がかかりました。
weblioでは【名詞】の3番目でようやく「問題」が出てきます。
辞書の訳語をかなり読み込まないと目的の訳にたどり着かないので、なかなか頭に入りませんでした。
こういった、実際に使われる頻度と辞書の訳語の記載順序がずれていると理解に時間がかかります。
issueとproblemとの違い
issueとproblemはどちらも「問題」ですが、ニュアンスの違いとして
・issue:議論すべき問題
という違いがあります。
problemは現実に困っていることがあって、解決すべき問題のことを指します。例えば、発券システムの故障とか保育園に空きが無いとかはproblemです。
一方issueは、議論によって賛成/反対の両論あるような問題のことを指します。選挙年齢の18歳への引き下げや原発再稼働などはissueですね。
ただ、実際のコミュニケーションではそこまで厳密に区別していないように思います。
issue listとは
開発現場でもproblemとissueをそこまで厳密には分けていません。
海外ベンダと開発を行う場合、相手との問題を共有するために”issue list”を作りますが、その使い方はまちまちです。
仕様段階でやりとりする場合は、使いやすさやコストなどまさに”issue”なことをリストにします(課題管理票)が、試作機を評価する段階では仕様の矛盾点も明らかな不具合も”issue list”(問題処理票)にして管理します。
このように開発現場でのissueは、議論が必要だろうが不要だろうが結論を出して製品に適用するかどうか判断しなければならないので、どのみち「解決が必要な問題」という点でproblemと大差ありません。
開発現場で厳密に区別していない、というのはこういった理由からです。
シングルイシューとは
最近、日本でも耳にするようになった”シングルイシュー”。
政治の世界でよく聞かれますが、これはシングルイシュー・ポリティクス(single issue politics)のことで「争点を一つに絞る」という意味です。
争点を一つに絞って有権者に訴えかけることで、自身の政策をわかりやすく際立たせる手法です。
小泉元首相の「ワンフレーズ・ポリティクス」もある意味「シングルイシュー・ポリティクス」と言ってもいいでしょう。
有権者にとってはわかりやすい反面、他の政策論争がおざなりになり、事実上、他の問題については白紙委任されたことになってしまう危険性があります。
issueとproblemの違いは、解決すべき問題か議論すべき問題か、の違いですが、語感としてはproblemのほうがより深刻な感じがあります。
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