海外ベンダと仕事をすると、サンプルや試作機を送ったり、修理用部品を送ってもらったりと国境を跨いで貨物をやりとりすることがあると思います。
貨物を海外へ送るときに必要な”invoice”(送り状)、費用の請求に使う”bill”(請求書)がありますが、invoiceにも「請求書」という意味もあって、なかなかややこしいです。
今回はinvoiceとbillの使い分けと、海外への発送・海外からの受け取りについて解説します。
invoiceとbillの違い
invoiceとbillの違いは
・bill:請求書。かかった費用の請求に使う。
・statement:請求明細書
…と、パッと見てもわかりづらいですね。(笑)
まずinvoice。請求書として使う場合もありますが、一番使うのは海外発送時に貨物に付ける「送り状」としてのinvoiceです。
日本から海外に貨物を送る場合、どんな運送会社を使おうとも必ず”invoice”を要求されます。
※インボイスの書き方の例です。(日本郵便)
https://www.post.japanpost.jp/int/use/writing/invoice.html
どんな貨物でも国境を超えるときは必ず輸出国の税関と輸入国の税関を通ります。
その際に
・価値はどのくらいのモノなのか?
を税関に明示する必要があります。
その書類がinvoice(送り状)です。
一方、billは「請求書」です。かかった経費を請求する場合はbillを使います。
日本でも在住外国人にもわかるように”billing statement”と英語併記されている請求書をたまに見かけますね。
invoice(送り状)とは
invoiceの話をすると貿易実務にまで及んでしまうので、ここでは簡単に説明します。
どんな貨物でも国境を超えるときはinvoice(送り状)が必要です。
これは、その貨物が何なのか?どのくらいの価値があるものなのか?がわからないと輸出国、輸入国で通関手続きが出来ないからです。(貿易実務では、国境を超えるモノ、情報は全て輸入(import)、輸出(export)と定義されます)
例えば輸出国では為替法(日本は外為法)で禁じられた貨物を国外に持ち出そうとしていないかチェックする必要がありますし、輸入国では輸入国の国内法に則って関税を徴収する必要があるため、国境を通過する貨物の詳細を知る必要があるわけです。
通常、FedEXやDHLなどの国際宅配便業者に集荷を依頼すると、貨物について”Commercial Invoice”(商業送り状)を作成するように言われます。
このCommercial Invoiceには、
・受取人の会社名、住所、電話番号、担当者名
・貨物の内容、数量、価格(いわゆるpacking list)
・送り主の署名
を記載する必要があります。
このCommercial Invoiceのフォーマットに決められた形式はありませんが、書き方がわからない場合は依頼予定の国際宅配便会社のウェブサイトでCommercial Invoiceのサンプルフォームを入手することができるので参考にするといいでしょう。
もしFedEXやDHLのウェブサイトを見ても書き方がわからない場合は、集荷に来たドライバーさんに聞くと丁寧に教えてくれます。
手荷物でもCommercial Invoiceは必要
意外と知らない人が多いのですが、海外出張のついでにサンプル部品や試作機を持っていく場合、たとえ手荷物で持っていくとしてもCommercial Invoiceが必要なことです。
出国時はあまり気にされませんが、渡航先への入国時に申告する必要があり、その際にCommercial Invoiceが必要なのです。
小さい部品だからいいか、とか小さい試作機1台だけだからいいか、なんて軽く考えると、渡航先の通関で見つかったときには没収された上に密輸の容疑を掛けられる可能性があるので注意してください。
電機系で言えば、チップ部品やプリント基板などは素人目には何に使うか想像もつかない上に怪しさ満点なので、見つかったらinvoice無しで通関するのはまず無理です。(没収されます)
取引先の米企業に出入りしている別の日系企業の人が、試作機をインボイス無しで持ち込もうとして通関でモメているのを何度も見かけたことがあります。
替えが効く部品や装置だったらその場で廃棄を宣言すればいいですが、国によっては廃棄手数料を取られる可能性もあります。
また、異議申し立ても不可能ではありませんが、現地の通関法に精通していなければ弁護士に依頼しなければ手続きが出来ませんし、その間も保管料を取られる可能性もあります。
また、たとえ通関できたとしても、その部品の価値を証明できる書類がありませんから、通関職員の判断で不等な関税を掛けられてしまうかもしれません。
たった1枚のインボイスを持ってこなかったがために起こりうるリスクはかなり大きいです。
Commercial Invoiceは自分で作成できるのですから、面倒がらずに作成していきましょう。
サンプルや試作品を送る場合
どんなモノでも国境を越えると関税が課税されます。ただしどの国でも非課税枠が設定されており、品目や価格によって免税になる場合があります。
一般的に、サンプルや試作品はそれ自体は商品(売り物)ではないので、Commercial Invoiceには以下の記載をすることで無償貨物扱い(非課税)になります。
・No commercial value for customs purpose only.の一文を入れる。
これは、サンプル品や試作機には価格自体を設定するのが難しいのと実際の製品価格とは違うので、「この価格は実際の価格ではなく通関目的の価格です」と書いておくわけです。
輸入国の法律によりますが、大体の国ではこう記載することでサンプル品や試作機は非課税で通関できます。
逆に海外からサンプル品を送ってもらうときも、こちらから「サンプルとして使う」旨を連絡しておかないと、普通の商品と同じように送られてきて関税+消費税が課税されるので注意しましょう。
海外との取引を始めたばかりのとき、invoiceを作っていないまま国際宅配便を呼んでしまい、集荷のお兄さんに住所の書き方から教えてもらったのは今となってはいい思い出です。
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