ビジネスの現場では、たまにTOEIC500~600点ぐらいの人が800点の人より英語を使いこなしているところを見かけるときがあります。
なぜでしょうか?
TOEICスコアは英語の知識レベルを表しているだけで、運用能力は別
例えば、私の会社が納入している大手電機メーカーではこんなケースがありました。
大手電機メーカー入社2年目のAさん、大学での専攻は電気工学でした。英語は比較的得意だったのと就職試験に有利になると思いTOEIC対策にも力を入れてスコア800オーバー。友達からも「Aは英語が出来ていいよな~」と羨ましがられたそうです。
その甲斐もあってAさんは念願の電機メーカに無事入社。
配属先で仕事にも慣れてきたころ、先輩社員と海外ベンダとの電話会議に出席するのですが、相手が話していることが全く聞き取れず、打ち合わせは全て先輩主導で進められ、本来自分が確認すべきことも聞けず自信を無くしてしまいます。
先輩は気落ちするAさんに「大丈夫だって、慣れればそのうちわかるようになるから。A君、TOEIC800点オーバーでしょ? 俺なんか去年受けたTOEICで580点だったんだから、あははは~」
「えっ?」先輩のTOEICスコアを聞いてさらに落ち込むAさん。。。。
…と、ビジネスの現場では割と良く聞く話です。
普通はスコア600の人よりスコア800の人のほうが英語が出来そうですよね?確かに英語の知識量を表す指標としてはそうなのですが、運用能力を正しく表しているかどうかは別なんです。
私も何度かAさんの先輩と一緒にTV会議に参加したことがありますが、その先輩は元々英語はそれほど出来なかったのが、業務上、海外ベンダとやりとりする必要性に迫られて仕事で英語を身につけたタイプの方でした。体系立てて英語を学習したのではなく仕事を通じて英語を覚えてきたのです。
その結果、意思疎通は出来るけど誤った文法や表現のまま英語を覚えてしまい、TOEICなどの英語力を測るテストではスコアが上がらないのです。
どうしてそうなってしまったのでしょうか。
仕事で英語を使う場合、相手(外国人)は業務の意思疎通が出来ればいいのでいちいち文法の間違いやスペルミスなどは指摘しません。
相手の文章が多少おかしくても本意が汲み取れればいいのですから、英語教師のようにいちいち間違いを指摘してくれたりはしません。
逆の立場になってみるとよくわかります。
例えば、外国人が拙い日本語であなたの会社の製品について電話で問い合わせしてきたとします。
文法はメチャクチャだし単語もあやふやだけど、言いたいことはなんとなくわかります。「もしかしてそれってxxxxってことですか?」って聞けば「ソデス!ソウデス!」と返ってくるのでこちらの言うことも伝わっているみたいです。
そのようなとき、あえてその会話の中で日本語のおかしなところをいちいち指摘しないですよね?むしろ必死に日本語を話そうとした外国人に「日本語お上手ですね~」ぐらい言っちゃいますよね。
先方も同じように思っています。だから先輩は間違った英語を直す機会が無いままブロークンイングリッシュが身についてしまったわけです。
このような人は、リーディングのPart5, Part6が全然得点出来なかったり、リーディングセクションよりもリスニングセクションのほうがスコアが高い、という特徴があります。(ネイティブスピーカーの恋人を作って英語を覚えたタイプも同様な傾向が多いです)
つまり、このTOEIC580点の先輩は英語で仕事が出来るけど、細かいニュアンスを理解していないまま仕事をしている状態です。
逆に先輩は細かいニュアンスを確認しなくてもいいようなメールの書き方を身につけることで、自身の英語力をこれ以上伸ばさなくても仕事が遂行できるようにしている、とも言えます。
これはこれである意味スゴい能力ですが、しばしば細かいニュアンスが含まれる事案の場合はやりとりの回数が増えて相手がしびれを切らすこともあります。「あー、この人以外で誰か英語の出来る担当いないかなー、いれば話が早いのに」と。
ブロークンイングリッシュでも業務は出来るけど….
ブロークンイングリッシュでも日常業務をこなすことは出来ますが、あくまでも業務だけに限ったコミュニケーションにならざるを得ません。それ以上の信頼関係を構築させようとするとやはり言葉の壁が立ちはだかります。
単なる仕事のメールでも、ちょっとしたトピックを追伸(P.S.)に入れることでお互いの心情を少し交えることが出来ますよね。
例えば、相手の国で何か事件や災害が起きたときに「そちらのオフィスはxxxxの災害の影響はありませんか?」と一言入れるだけでも、相手にとってみれば「あー、遠く離れた日本でも話題になってるんだなー」とか「気にしてくれてるのかな」とか、心を通わせることが出来ます。
相手も人間ですから、「ああ、Mr./Mrs.○○はこういう人なんだな」と思うでしょうし、仕事以外の話で共通の話題が出てくるかもしれません。
つまり、単なる業務連絡や調整メールをやり取りする関係から一歩進んで相手との信頼関係を深めるには、自分の気持ちを表現するだけの正しい文法、語彙が必要になります。
エンジニアの世界では最終的には語学力よりも技術力、という風潮は確かにあります。
それは間違いではないのですが、やはり相手も人間ですから、文章ぶつ切りで単語並べてコミュニケーションとる人よりは、きちんとした英語を使う人のほうが信頼しやすいのは心情的にも自然です。
足りないのは英会話の実践だけ
TOEICでスコア800を超えているのであれば読み書きはほぼ問題無いレベルです。リスニングも350点以上はとっているはずですから、足りないのは英会話の実践だけです。
今はまだ知識としての英語が実践での英語とリンクされていないだけです。電話会議で相手の言っていることがわからなかったら、思い切って聞いてみましょう。相手とコミュニケーションして通じるものを感じ取れると、急に知識の英語と繋がり始めて、じきに先輩より洗練した英語でコミュニケーションが取れるようになるでしょう。
TOEIC対策で覚えた英文法は決して無駄になりません。
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