よく英語の参考書などで「英文は頭の中で翻訳せず、英文のまま理解しろ」というのがあります。
そう言われても頑張っても出来ないからみんな困っているわけで、英語が出来る人に「英文は頭の中で翻訳せず、英文のまま理解しなさい」と言われても全く説得力がありません。
確かに英語を使いこなしている人は英文を英文のまま理解しています。しかしそれは英文のまま理解出来るようになる日が突然やってくる、なんてことではありません。
英文を英文のまま理解出来るようになるには、いくつかの段階を経る必要があります。
今回はその過程について説明したいと思います。
英文を英文のまま理解できるようになるプロセスとは
いくら英語が出来ない人でも、Thank youと言われれば「ありがとう」と理解出来ると思います。
これには2通りの理解があります。
- Thank youを一旦日本語で「ありがとう」と認識してから理解する。
- Thank youをそのままThank youと理解する。
この2つの違いは、母国語への変換が伴っているかいないかの違いです。一般的には1は英語初心者の理解プロセスですが、英語に慣れるにつれ2の状態になっていきます。
では1の状態が悪いのか?というとそういう訳ではありません。
人間は理解していないことを何百回、何千回聞いても、それだけで理解できるようにはなりません。
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当たり前ですが、理解していない単語、イディオム、構文は何百回聴いても理解することが出来ません。
そのため、英文を英文として認識するには、まず英文を日本語に変換して理解する必要があります。
↓
・何度も繰り返すうちに、頻繁に出てくるフレーズは日本語に変換せずそのまま理解するようになる。(英語→そのまま理解)
↓
・さらに続けるうちに、英文を英文として理解する。
最初のうちは頭の中で英語→日本語変換を必死に行います。そのため、話しているときに詰まったり、えーと、あー、、、と、もどかしい想いをしながら必死に話します。
しかし、その状態を何度も繰り返すうちに簡単なフレーズなどは日本語変換を経ずに理解できるようになってきます。Thank youを”Thank you”と理解できるようになる状態です。
更にその状態が続くと、英文を英文のまま理解できるフレーズがどんどん増えていき、最終的には頭の中で日本語変換せずとも英文を英文のまま理解できるようになってきます。
英語もスポーツも根底は同じ
”何度も繰り返すうちに英文を英文として理解できるようになる”というのはスポーツと同じです。
例えばバスケットボールを初めてやるとき、ほとんどの人はドリブルすらうまく出来ません。コーチの見本を見て真似したり自分で工夫してみたりしながら、あれこれ考えながら練習しますよね。
当初はいろいろ考えながら練習していたのが、繰り返すうちにいつの間にかドリブルやランニングシュートなどは頭で考えなくてもほぼ無意識に出来るようになってきます。
これは、最初のうちは目で見て、頭で理解して、手足を動かす、そしてうまくいかなければそれを脳にフィードバックして微調整する、ということを繰り返すことで脳で意識しなくても自然と手足が動いてドリブルが出来るようになってくるからです。
正確に言えば、脳で意識していないのではなく無意識(潜在意識)でドリブルが出来るようになっている状態です。
英文を英文として理解しているときはこれと同じ状態です。脳で意識せずとも英文を英文として処理していますが、潜在意識下では品詞や文型などを振り分け、脳の引き出しから瞬時につき合わせて文章を理解しています。
つまり語学もスポーツと同じようにある程度の理論を学習した後は、フレーズや構文を体に染み込ませる(つまり反復練習)をしないと、会話のときに瞬時に理解できようにならないのです。
「英語を英語のまま理解する」のは練習すれば自然とそうなる
私の経験から、「英語を英語のまま理解する」ことを意識しても一朝一夕に出来るようにはなりません。
もちろん「英語のまま理解出来る」ようになれれば一番いいですしそのレベルを目指すべきですが、そのための特効薬は無いのです。
しいて言えば、会話量を増やして会話パターンを頭に染み込ませることでしか英語を英語で理解できるようになりません。言い換えれば、英語学習を継続して会話練習を続けていけば、自然と「英語を英語として理解出来る」ようになれるのです。
初めは
だったのが、練習を積み重ねていく内に会話パターンが染み込んでいき
が出来るようになっていきます。
簡単なことは潜在意識にやらせよう
例えば、自転車に乗るのに、漕ぎ出しは右ペダルから、とか、右に倒れそうだから左側に体重を、とか考えながら運転する人はいないですよね?
これから自転車を練習する人を除けば、自転車の運転方法をいちいち考えながら乗る人はいません。ほとんどの人は無意識にバランスをとりながら運転するはずです。
言語も同じです。英語で会話しているとき、相手の言葉が一部聞こえなかったとしましょう。
( )部が不明瞭で聞こえなかったとしても、ある程度英語を勉強していればDidの次には名詞や人称代名詞がくることを潜在意識は既に知っています。また、Didとhimの間には必ず動詞も入っていることも潜在意識に刷り込まれています。
そのため、聞こえなかった( )の部分は脳が潜在意識下で相応しい候補を推測・補填して、意味のある文章にしてくれるのです。
この例では、こちらに向かって発せられた文章であれば、”you”、”send”あたりであることが予測できますし、第三者の話題であれば”he/she”あたりが候補になりますね。
この選択肢があまりにも多い場合は、潜在意識でも意味のある文章に組み立てられないので”聞き取れなかった”という情報が顕在意識に渡され「えっ?Eメールがどうしたって?」と聞き返すわけです。
しかし単語や文法を理解していない状態だと、顕在意識下でしか英語を解釈することができないため、聞こえなかった部分や聞こえづらかった部分を(潜在意識は)予測・補填することができません。
リスニングが出来る人と出来ない人の違いはここにあります。
つまり英語の文法や語彙が体に染みついているということは無意識=潜在意識が仕事をしている状態です。
簡単なフレーズやパターンは潜在意識にまかせてしまえば、顕在意識下の脳をもっと別のこと、例えば相手の主張に対してどのように反論しようか、とか、こんなことを言ったら傷付くかな、とか英語以外のことに脳を使えることになります。
英語を聞く・話すのでいっぱいだったのが、潜在意識に仕事をさせることで余裕が生まれ、今よりも一段高い会話スキルを獲得することが出来るのです。
その”潜在意識”に仕事をさせるには、場数を踏むしかありません。
英語で会話する機会を増やし、定型フレーズを体に染みこませることが顕在意識での作業を潜在意識に移管することになります。
潜在意識は自分に忠実な部下です。簡単な仕事はさっさと部下に移譲して、自分はもっとレベルの高い学習に意識を割くようにすると、学習効果がより高まります。
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