先日のトランプ大統領の発言が日本の報道で話題になっています。
ちょっと引用しますね。
トランプ米大統領は12日、ホワイトハウスで開いた会合で、米国が貿易赤字を抱えている国々を対象に報復関税を課す方針を表明した。
制度の詳細は明らかにしなかったが、トランプ氏は「週内、数か月のうちに耳にすることになる」と指摘。対象国は「米国につけ込んでいる国で、いくつかはいわゆる同盟国だが、貿易上は同盟国ではない」と述べたうえで、「米国は中国や日本、韓国、その他多数の国で巨額のカネを失っている。(それらの国は)25年にわたって『殺人』を犯しておきながら許されている」(They’ve gotten away with murder)」と述べ、異例の表現で非難した。
トランプ氏は不公平な貿易により、米国の製造業が衰退し、雇用が失われる一方、相手国は不当に利益を得ているというのが持論で、その被害の大きさを「殺人」という極端な言葉に込めたとみられる。
引用:http://www.yomiuri.co.jp/world/20180213-OYT1T50105.html
この”gotten away with murder”を「殺人を犯したのに逃げ回っている」と訳していることが今回問題になっています。
get away with murderは「好き勝手にする」という慣用句
“get away with~”で「~を持って逃げる」「~から逃れる」「(罰を受けずに)許される」という意味があります。
恐らくこの記事を書いた記者さんはこのイディオムから
と推測してしまったものと思われます。
既にいろんなところで指摘されていますが、この”gotten away with murder”はそこまでおどろおどろしい表現ではなくて、「今まで好き勝手にやっていた」という意味の一般的な慣用表現です。
直訳すると「殺人犯が(罰も受けずに)逃げ回っている」ですが、慣用句に転じて「好き勝手にしている」という意味なわけです。
なので特に殺人に関係していなくても「あいつ(ズルしたのに)うまいことやってる」みたいなときに使われます。
トランプはこの”get away with murder”という表現が好き
今回の会合での発言だけではなく、トランプは選挙期間中からもちょくちょくこの”get away with murder”という表現を使っています。(”trump get away with murder”で検索すると過去の記事がいろいろと出てきます)
今回の誤訳は、おそらく記者さんのトランプに対するバイアス(トランプは過激な発言を好むというイメージ)が悪さしてしまったのではないでしょうか。
なぜ私がこの慣用句を知っていたかと言うと、アメリカのロックバンド”PAPAROACH”の3rdアルバムに”Getting Away With Murder”というアルバムがあったからなんです。
このバンドはメタルとパンクとラップを融合したいわゆるミクスチャー系と言われるジャンルで、ハードコアスタイルのサウンドが売りのバンドです。
なので当初は「殺人を犯して逃げ切るような、逃亡者の心境を表現するアルバム」なのかな?と思っていました。この手のジャンルは過激な表現が好きですし。
まあそういう意味もあるのでしょうが、アルバムタイトルに持ってくるところから「好き勝手にやる」「俺達は俺達の好きなようにやる」ということにもかかっている、実にパンクなタイトルだったんですね。
get away with murderのまとめ
日本語でも「耳が痛い」と言えば、多くの場合は本当に耳が痛いのではなくて、他人の言葉が自分の弱いところを突いていて聞くのがツライ、という意味のように、英語でも直訳すると意味が通らない慣用句(イディオム)がたくさんあります。
英語学習はこういった慣用句をいかに効率よく潰していくかがポイントになります。
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