最近、普通の会話の中でもよく使われるようになってきた”リベンジ”(revenge)。
スポーツ選手がインタビューで「今回は負けてしまいましたが、次回は必ずリベンジします!」みたいな感じでよく使ってますよね。
一般の会話でも「xxのコンペではA社に負けましたが、次に当たったときは必ずリベンジします」みたいに使っていますが、これは本来の意味からすると誤用です。
リベンジ(revenge)の本来の意味は復讐・報復
元々revengeの持つ意味は「復讐、報復、仕返し」で、結構おどろおどろしい表現なんです。
なので気軽に
という使い方は、明らかに元の意味からズレています。
確かにrevenge match(リベンジ・マッチ)という表現はありますが、これは「雪辱を晴らす試合」という意味であって相手に復讐することではありません。
そのため、スポーツやゲームなどで「前回は負けたから今回はそのお返しをしてやる」という意味でrevengeを使うと、相手に不正をされて負けたの?とか何か弱みに付け込まれて負けたの?と受け取られることでしょう。
まぁ日本語で言う分には実害ありませんが、英語で言われると相手はビックリするでしょうね。
スポーツの分野ではOKなの?
よくYahoo!知恵袋などでも「”revenge match”(リベンジマッチ)という言葉があるぐらいだからスポーツの分野ではOK」とか「revengeには雪辱を晴らすという意味があるからスポーツでは使ってOK」なんて回答も見かけますが、これは誤解です。
そもそも「復讐」という言葉には、相手に恨みや怨恨があってそれを晴らすための復讐、という意味も含まれるので、結構ヘビーな言葉なのです。
“revenge a defeat”と言えば「雪辱を晴らす」という意味のイディオムですが、これは相手に復讐するという意味ではなく前回の敗北に対して「雪辱を晴らす」わけです。雪辱を晴らす対象が人ではなく前回の結果に対してです。
アメリカのスポーツニュースを見ていても、インタビューでrevengeという言葉は聞いたことがありません。新聞記事や当事者以外が試合カードを煽る意味で”revenge match”とか”revenge a defeat”というのを聞くぐらいです。
もし選手が”revenge”を使うシーンがあるとすれば、ボクシングや空手などの格闘技で対戦相手との折り合いが悪くて口論気味になっているときぐらいだと思います。
revenge = 再挑戦ではない
revengeには復讐や報復という意味はあっても、再挑戦という意味はありません。
日本で使われる「リベンジ」は主に再挑戦という意味で使われるのがほとんどです。
再挑戦であれば”try again“のほうが意味としてフィットします。
どうしてそうなったのか?
これは英語が日本語化したときに意味がズレた典型的な例です。
revenge以外には、”naive”(ナイーブ)とか”delicacy”(デリカシー)とかも本来の意味からズレた言葉です。
本来、ナイーブ(naive)は繊細に加えて「世間知らずな」という侮蔑的な意味も含まれています。だから「彼女はナイーブ」というのは決してほめ言葉ではありません。
デリカシー(delicacy)は「優雅、上品さ、繊細さ」という意味がありますが、どちらかといえば「ごちそう、珍味」という意味のほうが強いです。
だから”You don’t have delicacy.”(あなたはデリカシーが無い)と言っても、相手は「え?どういう意味?」となるでしょう。
日本語でいう「デリカシーがない」は英語では”insensitive“(繊細でない)です。
思うに、英語がまだ一般的でなかった頃に、英語に堪能な人がインテリぶって日本語で言えばいいのに英語交じりでしゃべっていたのが広まったんでしょうね。
その後、意味がぴったりハマって定着したものと、ズレたまま定着したものと分かれたのでしょう。リベンジ、ナイーブ、デリカシーなどは後者ですね。
もちろん「家族や親族がこいつのせいで不幸になった。絶対にリベンジしてやる!」というのは言葉の使い方としては正しいです。
ただし日本の法律では決闘や私刑は禁じられています。念のため。
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