仕事で海外を行き来するようになってから、海外で活躍しているいろんな日本人の方の英語に触れてきました。
そんな経験の中でふと不思議に思ったのが、
と
が存在することです。
なぜでしょうか?
TOEICが800点以上なのに英語が全然話せない人とは
恐らくこのタイプの人は、国内で英語を一生懸命勉強してきた人だと思います。
特に、応募要項にTOEIC要求スコアがある会社を狙っている学生さんとか、会社から管理職への登用条件にTOEICxxx点以上、という条件が付けられた人など、TOEIC対策に重点を置いて勉強してきた人です。
この場合の目的は「TOEICの目標スコアをクリアすること」なので、スピーキングの練習は全然していません。する時間が無かったと言ったほうがいいかもしれません。
そのため、英文法はほぼマスターしており、リスニングもあまり複雑でない会話であれば問題無し、でも話すのは全然ダメ、という英語スキルになっています。
世間一般の人からすれば「TOEICで800点超えているなら、英語ペラペラでいいよね~」なんて思われますが、本人的には言いたいことをうまく言えず、下手すると英語で道案内すらおぼつかない人も少なくありません。
彼らは読み書きは問題ありませんし、語彙もそれなりに獲得しています。
圧倒的に足りないのはスピーキングの訓練です。
言いたいことを頭の中から取り出して口からアウトプットする練習が足りないだけので、英会話スクールやオンライン英会話でスピーキングの練習を積めば、みるみるうちに英語が話せるようになります。
このタイプの人は英語の素養は既にあるので、会話練習さえすれば比較的短期間に英語が話せるようになります。
英語ペラペラなのにTOEICのスコアが600点台の人
逆にこのタイプの人は、現場で英語を覚えたタイプの人が多いです。
私が海外で会った半導体商社の駐在員の一人が正にそんなタイプで、初めて会ったときは現地のネイティブスピーカーとジョークを交えて話している(ように見えた)のを見て、さすが商社マンは違うなー、と思ったものです。
しかしそんな彼が帰国したときに受けたTOEICが680点だったと聞いてビックリしました。
英語がペラペラなのにTOEICのスコアが低いというのはどういうことでしょうか?
彼の場合は、10数年前、設立間もない半導体商社に入社したときに、ネットワーク技術の知識を買われて海外の半導体メーカー担当となり、取引量が増えてきてそのまま駐在員になったのだそうです。
彼は現場や現地の生活の中で英語を覚えたために文法を正しく覚えていません。
極端かもしれませんが、日本語で言うところの「ワタシ、ダメ、コレ。イイ、アナタ、オシエル。」みたいな話し方なんですね。
でも文脈の中でならこれでも十分通じてしまうので、それ以上の英語力向上を目指さなかったのでしょう。
例えばTOEIC Part5の問題で
(安全性と安定性を確保するため、本棚を組み立てる際は説明書に忠実に従うことが重要)
(A) exactly
(B) exact
(C) exactness
(D) exacting
という問題があったとします。
当然、空所の位置から副詞の”exactly”が正解になりますが、実際の会話では(B)~(D)のどれを入れても通じると思います。
もちろん(B)~(D)を入れると変な英文になります。おかしな文ですが、会話の文脈から「変だけど言いたいことはわかる」文になるので、相手はそのまま流して会話を続けると思います。
この「現場で英語を覚えたタイプ」の人は、とにかく「通じるための英語」しか知らないので、こういった英語の運用能力を測るテストでは正答できないのです。
「ネイティブ並みにペラペラの英語を話す」と言いましたが、彼らの話す英語をよく聞いてみると、非常に簡単な文法で会話していることがわかります。むしろ少し拙い感じさえします。
逆に言えば、彼らに足りないのは「正しい英文法」です。
それこそTOEICのPart5, Part6対策を兼ねて英文法をきちっとおさらいすれば、みるみるうちに英語力が底上げされるでしょうね。
https://english-no-problem.com/toeic/post-305/
https://english-no-problem.com/toeic/post-310/
ではTOEICは英語能力を正しく測れていないのか?
こうなると「じゃあTOEICって英語能力を正しく測定出来ないの?」と思うかもしれませんが、そうではありません。
ビジネス英語をどの程度正しく理解出来るのか?を具体的な数値(スコア)で表すことができ、しかもテスト回が変わっても実力が変わらなければほぼ同じ数値が出るという、評価側にすれば使いやすい指標です。
しかし、一般的にはTOEICのスコアとスピーキング、ライティング能力には相関が見られるものの、人によっては大きくバラつくことが以前から指摘されていました。
それが前述した「TOEICのスコアが高いのに話せない」「TOEICのスコアが低いのに(一見)ペラペラ」です。
そこで従来のTOEICとは別に”TOEIC Speaking and Writing Tests”(TOEIC S&W)というテストを2007年から実施するようになりました。
従来のTOEICはS&Wテストの区別するためにL&Rテスト(Listening and Reading Tests)と呼ばれています。
まとめ
巷には「TOEICで高得点を取っても、英語を話せないのでは意味が無い。だからTOEICなんて不要だ」という意見や「英語なんて勉強しなくても、英語を使わざるを得ない環境に行けばイヤでも覚える」といった極端な主張を鵜呑みにしている人が少なくありません。
私はこのエントリで書いたように、TOEICがハイスコアなのに話せない人はスピーキングの訓練が足りないだけで英語の素養は十分にあると思いますし、英語がペラペラなのにTOEICのスコアが低い人は、正しい文法を学ぶことでブロークンイングリッシュから脱却できると思っています。
むしろ、偏った英語スキルを是正するのに、積極的にTOEIC L&RテストやTOEIC S&Wテストを使ったほうが、自分の足りないところに早く気づけると思います。
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